本当の「made in Japan」を創造する「宝生流ゼミ」スタート!
〜1000年間受け継がれてきた「能楽」から日本人としてのアイデンティティーを認知する〜
ファッション業界では、コンセプト段階から「日本らしい」商品やビジネスの必要性が求められています。
西洋の後追いを続けてきた同質化したデザインは、国内では価格競争に晒され、個性を失った商品やビジネスは業績不振に喘いでいます。
同様に、今後も拡大し続ける世界市場に売り出していくには「日本らしさ」という価値を加えなければ価格競争で負けてしまいます。
この「日本らしさ」は、1000年間変わらず「日本の哲学」を引き継いできた「能楽」の中に、たくさんのヒントが残されています。
「洋服」を勉強するスクールは、西洋美術史や服飾史(洋服)を学ぶ機会が多くありますが、日本の美術や着物の歴史などの美意識を研究する機会はほとんどありません。
TFLでは、次世代のファッション業界を支える人材から「日本らしい」デザイン・ビジネスを生み出すためのプロジェクトとして、能楽の第20代宗家「宝生和英」さんに講師として参画いただき5回のプロジェクト「宝生流ゼミ」をスタートさせました。
多様性を認めイノベーションを続けてきた能楽
宝生流の家元でもある宝生さんの挨拶からスタート。
立ち姿、話す言葉、音量、音質、さらに驚くべきは、宝生さんの持っている知識の豊富さと深さ。
受講生がどんどん引き込まれていきます。
(なんと『旦那』という言葉はインドの『ダーナ』が語源で”援助してくれる人”という意味があるのだとか、ということも教えてくださる知識の豊富さ!)
江戸時代に能から派生した歌舞伎はエンターテイメント性を追求。「楽しませる」ことに主眼にしたが、能楽は「心を鎮めさせる」ことを目的としているのです。
そう、例えるなら美術館のような空間。
能楽は物事の2面性をバランスよく提案し、答えを出さずにゆとりを持たせるのだそう。観劇者が想像することにより、それぞれの結果を見出すのです。
感じ方は見る人の主観に委ねられているという多様性のある考え方が根底に流れています。
能は多様性を認め、イノベーションを続けてきたからこそ1000年もの間受け継がれてきたのですね。
能装束の柄でも使われる一松紋様や唐草模様は、シルクロードや海流に乗った航路を通じて日本に渡ってきました。
海外の文化を日本流にアレンジして取り入れるという日本独特の文化につながっていますね。まさに「洋服」の文化に通じるものがあります。
また能の考え方に「進化」の反対は「無変化」。「進化」と「退化」は変化すると意味において同義と捉える。
というものがありました。
様々な要素を受け入れ、そして取り入れて哲学することで成長する、能ならではの考え方でした。
光の角度で変わる、能面の表情
元々、野外の能楽堂で、時々刻々とかわる太陽の光の中で演出されてきた能楽。
なんと、太陽の位置毎に講演する演目が決まっていたそうです。能は人のあるがままを表し、自然までもが演出となっていたのですね。
非常に注目したいのが能面の表情。
能面も光の角度で見事に表情が変わるのです!
優しげ・哀しげ・切なげ・・・
その表情の印象すら、見る人の感情に委ねられる自由さ。
現在のストリートから生まれるスタイリングにも通じる考え方。新しいビジネスの考え方になります!