『Imagine Fashionゼミ』vol.5~川崎和也講師~
第5回目の「イマジン・ファッション(Imagine Fashion)ゼミ」をレポートします。
講師は第2回に引き続いて、デザインリサーチャー/スペキュラティヴ・ファッションデザイナーの川崎和也講師です。ウェアラブルテクノロジーやバイオテクノロジーなどのファッションテックに関する実践や理論が専門で、新しいマテリアルを研究開発し衣服作品を制作されているデザイナーでもあります。
現状、日本のファッション学校では理論的なことが展開されることはあまりありません。服の「意味」について考えるというよりはむしろ、スキルに特化した教育カリキュラムが主流です。しかしながら、「批評」という考え方でファッションを考えてみるとどうでしょうか。「ファッション」を取り巻く、社会・技術的問題に対して、「問い」を投げかけるような作品を制作することも可能なはずです。
2010年以降、「ファッションとは何か」という根源的な主題を扱うような展覧会が世界中で開催されるようになりました。
現在、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で開催されている「Is Fashion Modern?」もその一つです。
本展覧会では、「Fashion as Design」を一つのテーマとして掲げ、ファッションを社会理論、批評とテクノロジーなど様々な視点から考えることを重要視しています。他にも、ファッションデザインが伝統的に依拠してきた刺繍や型紙製法を「テクノロジー」として捉え、3Dプリンタといった新しい技術の台頭も同時に評価する「Manus X Machina: Fashion in an Age of Technology」という展覧会も、2016年にMETでAppleの協賛を得て開催されました。
こうした背景を前提に、講師が実際に制作した作品として「ウェアラブル」と「バイオ」に関連する作品を紹介いただきました。
まずは、国際的なメディアアートの祭典であるアルスエレクトロニカに出展され、STARTS PRIZEにノミネートされた「Speculative Fashionable Wearable」という作品です。その中でも「Information Corset」という衣服では、パーソナルな情報をセンシングする技術が発達し、そういった機能を組み込んだ着衣型ウェアラブルテクノロジーの開発が進んだ未来に関するシナリオです。
19世紀に流行したコルセットとは異なり、今や人間は情報技術を戦術的に利用することで、自らの健康を管理することができます。この衣服は、着る人の場所や時間、状況、文化に合わせてシルエットをコントロールすることができる衣服です。
次に、WIREDが主催するWIRED CREATIVE HACK AWARDで特別賞を受賞した「Biological Tailor-Made: 2.5 Dimensional Fashion Pattern Cutting」です。
この作品は、現在研究開発が開始されつつある生物由来の素材を前提とした新しい型紙制作の方法論と、「バイオテクノロジーの時代」と言われる21世紀のファッションデザイナーの役割について推論した作品です。実際に、自宅で巨大なバイオマテリアルを培養し、それをデジタルファブリケーションによって制作したバイオ素材用の型紙ツールで造形して衣服を制作しています。バイオハッキングとファッションの融合と言える作品です。
次週は渋谷にできたFacafe MTRL(ファブカフェマテリアル)とBioclub(バイオクラブ)を訪問させていただき、現在徐々に顕在化しつつある、テクノロジーの民主化について体験しながら、ファッションとの融合可能性について考えてみたいと思います。