「マスカスタマイゼーション・プロジェクト」レポート②
TFLが産学協同で研究、開発を目指すインダストリー4.0「マスカスタマイゼーション・プロジェクト」をレポートします。
※インダストリー4.0とは?
IoTやAIを用いることによる製造業の革新。
このプロジェクトに世界25000社との取引があるCAD/CAMメーカーであるレクトラジャパンの田中社長に参画いただき、ファッション産業が目指す「デジタル化」に関する世界潮流をレクチャーいただきました。
サプライチェーン(川上から川下まで)が細分化され分断されているファッション産業。
分断され細分化されているが故に「デジタル化」が遅れています。
特に国内のものづくりの現場(縫製工場など)は、97%もの衣服が海外で縫製・生産されるようになり空洞化が進んできました。
経済産業省HPより
ビジネス潮流に関するショッキングなグローバル情報が紹介されました。
『2000年以降、デジタルモデル拡大の影響で伝統的業界モデルの崩壊が起き、全米上位500社の企業(Fortune500)のうち52%が倒産や買収で存在しなくなった!』
つまり、デジタル化が遅れた企業は生き残ることが非常に難しくなるということ。
産業構造や製品特性からデジタル化が遅れていたファッション産業にもデジタル化の波が押し寄せてきました。過去の事例にようにデジタル化に対応しない企業は縮小の可能性が高くなります。
※オートメーション化(3.0)とデジタル化(4.0)の違い
・オートメーション化(3.0)とは自動化のこと。機構や機器が、人手を使うことなく、自動的に制御、動作、連携すること。ロボットを使って製造を効率化することやAIを使った自動化などを言う。
・デジタル化(4.0)とは、日々の生活の中にデジタル化可能なものすべてがデジタルデータとして統合されていく世界。
デジタル化の最大のメリットは、地理的物理的制約を受けずに、データの蓄積や再利用が驚くべき低コストで可能になること。そしてそれがゆえに、カスタマーセントリックな手法が可能になる。
ファッション産業で求められる新しいデジタルモデルの一つが「マスカスタマイゼーション」です。
※マスカスタマイゼーションとは?
個々の消費者の好みや体型等のデータに応じた個別の受注と⽣産システムをIoT等のデジタルツールで連携させることで、従来の⼤量⽣産と同様の効率性で、オーダーメイドの⼀点物を⽣産・販売する取組。
(経済産業省HPから)
「マスカスタマイゼーション」はZOZOSUITのサイジング技術などのフロントエンドのサービスが注目を集めていますが、
このビジネスモデルを成功させるためには、バックエンドである「製造工程」のデジタル化、オートメーション化、そして「流通の効率化」も両立させることが必要です。
TFLで構想中のマスカスタマイゼーションの流れ
「マスカスタマイゼーション」は個々の消費者ニーズに合わせた受注品を一つ一つ製造するため、いかに効率化した生産システムで供給体制を作るかが成功のポイントです。
つまり、大量生産で実現できる販売価格を少量生産で実現させる生産体制を整えるビジネスでもあります。
この生産体制を整えない限り「マスカスタマイゼーション」が実現できないことはZOZOSUITの経験からも見て取れます。
一般的に、同じ形の衣服を数万点生産する縫製工賃(海外生産)は数十点生産する際の縫製工賃(国内生産)の1/10〜1/5程度(量と生産国などによる)とも言われています。
大量生産の縫製工場(1着の縫製工程を複数技術者が分担・技術習得容易)
サンプル工場(1着の縫製工程を1人で完成・技術習得が難しい)
この縫製工賃の価格差をデジタル化やオートメーション化することで埋めていくことは可能でしょうか?
※上記の写真にあるようにポケットなどの同じ形のパーツを大量に作ることはロボット化できていますが、素材を変更したり形を細かく変更する対応は苦手です。
様々な形や素材に対応しなければならないカジュアルウエアの縫製工程はオートメーション化が難しいと言われています。
フランスに本社を持つ世界トップのアパレルCAD/CAMメーカーのレクトラ社は、個々の消費者に合わせた最適な型紙生産や裁断をデジタル化、オートメーション化するシステムを開発しました。
この新システムは個別のオーダーに対応した型紙製作と生地の裁断にかかる時間を1/5〜1/10に短縮できます。
マスカスタマイゼーション は、ユーザーの課題を「カスタマイズ」で解決する「フロントエンド」のサービスや新しい衣服の購買体験と、
その受注に答えられる「バックエンド」のものづくりの体制づくり、そして、何よりもこのビジネスに関わる全ての人が生活を豊かにできるエコシステムを構築することが、このプロジェクトの成果と考えています。
※マスカスタマイゼーションの製造原価と上代(販売価格)の構成比の考え方
TFLのプロジェクトではフロントエンドのサービスにAIによる採寸や3Dモデリングによるデザイン選択、ユーザーの購買意欲を高めるサービスなど様々な仕組みが出来上がりつつあります。
10月に実施する合同展示会「PLUGIN」で新しいビジネスのオープンソースとして紹介します。
乞うご期待!