ファッション3Dモデリングの本格活用が始まる1年に
2020年はファッション3Dモデリングが浸透する年になる!?
2020年はファッション3Dモデリングが生産や流通で本格活用される年になりそうです。
私見を含めてファッション業界の3Dモデリングの活用に関して情報をまとめたいと思います。
他業界での3Dモデリング活用に関して
■建築業界
3Dモデリング活用が非常に進んでいます。
建物の設計だけでなく土木やインフラ設計などにフル活用されています。
モデリグ活用だけでなくxR (Extended Reality・VR、AR、MR を含む技術)と合わせての活用が進んでいます。
イギリスでは学校や病院、インフラなどの公共事業におけるBIM活用が政府によって義務化されているほど先端的な取り組みを進めています。
※BIMとは?
Building Information Modelingの略。建物の3Dデジタルモデルに、コストや仕上げ、管理情報などを追加したデータベース。建築の設計、施工から維持管理までの工程で情報活用を行うためのソリューション。これによって変化する建築の新しいワークフローのこと。
※※ファッション3Dモデリングに置き換えるとすると、3DCG&パターンを仕様書、MDマップ、納期管理表、生産管理表、原価計算、ラインシート、購買顧客情報などなどのデータベースを連動させるイメージでしょうか?
【代表的な建築業界3Dモデリングソフト】
AutoCAD/Revit(Autodesk)・Vectorworks(A&A)・ArchiCAD(GRAPHISOFT)・Rebro(NYKシステムズ)など
※上記ソフトウェアのうち、Revit、ArchiCAD、RebroはBIMアプリケーションです。このほかインテリア系では3dsMAXなども使用されています。
■自動車業界
製造メーカーが3Dモデリングソフト開発を手がけるなど早くから3Dモデリングが広く活用されています。ボディ系のモデリング、機械設計系、電装系、各種シミュレーションによって複数のCADを併用しています。
【代表的な自動車業界3Dモデリングソフト】
CATIA(Dassault Systèmes)・NX(Siemens PLM Software)・Creo Parametric(PTC)など
※トヨタでは、ボディはCATIA、エンジン等はCreo Parametricを使用。日産、マツダなどはNXを導入しています。
■家電など機械製造業界
AutoCAD(Autodesk)・ SolidWorks(Dassault Systèmes)・ Rhinoceros(McNeel & Associates)など
※このほか精密機械系ではNXやCreo Parametricを使用するなど用途に応じて様々な3DCADが使用されています。
■代表的なファッション3Dモデリング
TFLでレッスンを行なっているファッション3Dモデリングソフト「CLO」の特徴
◾️リアルな3Dシミュレーション
…素材物性パラメータの調整などによるリアルな3Dシミュレーション。
…V-rayレンダラーを使用したレンダリングにより、CLO単体で高度な出力が可能。
◾️修正・変更がリアルタイムで反映
…2Dパターンの修正が、リアルタイムで3Dシミュレーションに反映。同様に3D側での修正も2Dパターンに反映。
…色・柄はもちろん、素材の変更、地の目の変更など、様々な修正・変更をリアルタイムにシミュレーション。
◾️ワンストップでデータ作成が完結するユーザビリティとインターフェース
…3Dモデリングソフトはほとんど機能ごとにソフトが分かれている。(ex. BrowzwearはレンダリングはMODOで行うなど)
…CLOは2D〜3Dのシミュレーション、着圧確認や動画によるドレープの確認、高精度な出力までを単体で完結。
◾️使用にあたっての価格設定
…個人使用の場合CLOは月額$50。技術習得にかかる費用が安く済む。
日本のファッション産業でファッション3Dモデリングの活用が進まない問題点
他の製造業ではすでに3Dモデリングを活用した製造・生産がなくてはならないものになっています。
しかし日本のファッション産業では3Dモデリング導入がなかなか広がっていません。
ファッション産業で3Dモデリング活用が広がらなかった問題点を整理してみます。
「ソフト開発」「導入コスト」「活用できる人材不足」の3点に課題が挙げられます。
①:「ソフト開発の遅れ」
・建造物や自動車と違い製品が形を変える(=動きに対応する製品)こと
・使用するマテリアルが無限にあり全てに対応することが難しいこと
・マテリアル表現が難しい
②:「導入コスト」
・商品単価が安く1点あたりの利益額が少ないため、ソフト導入や運用までにかかるコスト(導入コスト、人件費、オペレーター育成期間など)とメリット(経費と時間削減)が見合わないこと(多品種小ロットがネック)
③:「活用できる人材不足」
・ファッションクリエイター(デザイナー・パタンナー・経営者など)のCGリテラシーが低い
・CGクリエイターがパターンや縫製仕様、ディティールの構造理解は無理
・素材表現(テクスチャーマッピング・物性データ入力など)が難しい
ファッション3Dモデリングの幕開け
①のソフト面での課題は産業活用できるレベルのものが開発され、少しずつ導入検討するアパレル企業が増えてきました。
昨年秋には、国内アパレルの先陣を切ってファーストリテイリングが自社サイトで「ファッション3Dモデリスト募集」も始めています。
②の課題もファーストリテイリングなどのグローバルSPA(膨大なロット)では、導入・運用コスト見合うため導入が進んでいます。
また、中規模の生産ロットのアパレルの中でも、企画製造部署での活用だけでなく、ECやデジタルマーケティング部署・販売部署での活用と合わせて導入コストや運用コストを考える横断型マネジメントのできる企業では、コストとメリットのバランスを考えられるようになり導入検討が始まっています。
ここまで書きますと、現状で導入のキーになる点が③の人材面の課題です。
TFLでは、この課題を解決するために昨年から韓国のファッション3Dモデリングソフト「CLO」のオペレーションの授業を開始して人材育成を開始しています。
あわせて「バーチャルファッション研究会」を設立して、
・素材データストック
・ベーシックアイテムの3DCGストック
・ユルミ(数値)と着心地(感性)の関係性研究
などを始めました。
オペレーションスキルとあわせて「素材アーカイブ」「マスター3DCG」を活用することで、TFLの修了生たちは“ファッション産業における3DCG活用の未来を切り開いてくれる”ことと信じています。
最後に。
年間14億点ものアパレル製品が消費される世界有数のファッション消費大国、日本。
供給点数(28億点以上)の半数以上が売れ残る日本のファッション産業。
半数以上が売れ残っていても作りすぎを辞められないビジネスモデル。
ファッション3Dモデリング活用は、このファッション産業の課題を解決する「革命」をもたらすはずです。
20数年前に
「ファッション製品はECで購入されることはない。試着しないと日本人は洋服を購入しないから。」
とEC化に遅れて苦慮しているアパレル企業もたくさんあります。
「ファッション3Dモデリングは使えない。」
と導入を躊躇している状況と重なると感じることは杞憂でしょうか?
3Dモデリングソフトは道具です。
「道具をどのようにすれば上手く活用できるか?」
を決めるのは人間の役割です。
以下の2つの画像はリアルとCGです。
どちらか分かりますか?
これが全てを物語っていると思います。
(記載TFL市川)
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