TFLファッション×テックBLOG 『Fashion Diversities.』 Vol.4-エシカル&サスティナブル-
~ファッション産業と地球環境~
TFLでは「サスティナブル」「エシカル」を研究する機会があります。
未来のファッション産業を考える上で決して外してはいけない考え方だからです。
そしてファッション産業が「サスティナブル」な産業に変わって行くためには「テクノロジー」の活用が必要不可欠と考えています。
今回はその考え方の背景を考えていきましょう。
「人間らしい生活」を維持していくために必要な基本要件は「衣食住」です。
我々の文明はこの「生活」をより快適に、便利に、豊かに、時代の価値観に合わせるように発展、変化してきました。
文明や経済発展とともに、雨風を防ぐ住居が確保され、食べるものに困らず、機能的な洋服で寒さに凍えることもなくなりました。
経済発展を遂げた先進国において、命を維持する最低限の「衣食住」の確保が「あたりまえ」になると、我々はさらに「質の高い生活」を求めてきました。
地球の人口が爆発的に増え始め、現状の質の高い生活を維持するために使うエネルギーの問題や環境への負荷、経済格差などが先送りできない現実的な問題となり、ファション産業でも「サスティナビリティー」を考えないビジネスは遠からず淘汰される局面が目の前にきています。
ではファッション業界は、これらの問題をどのようにして解決していったら良いのでしょうか?
複雑なこれらの問題をひもといて解決すべき課題を明らかにするために、具体的なデータを見てみましょう。
(以下、WWDより一部参照)
・ファッション産業で消費する「水」の量 =全産業中第2位(世界の排水の20%!)
・コットン製シャツ1枚の製造 =約2700リットルの水を消費
=一人の人間が飲む2.5年分の飲料に匹敵
※染色、温度管理、洗浄などに大量の水を使います。
・衣服の廃棄率 =85%(1年で210憶トン)
・二酸化炭素の排出 =世界の排出量の10%
※衣料品の85%(210億トン)はゴミとして処分され、このほとんどは焼却処分されます。また、化学繊維(ポリエステルやナイロンなど)の占める割合が増えCO2の排出量が増えているほか、NOx(窒素酸化物)など様々なガスが発生します。
・綿花生産のために使用する殺虫剤の量 =世界の24%
※オーガニックコットンの生産量は綿全生産量の2%未満
・サプライチェーンの労働力 =8割女性で児童労働に依存する産業
※2013年4月、バングラデシュの9階建てのビル「ラナ・プラザ」が突然崩れ落ち入居していた複数の縫製工場の労働者1100人余が命を落とし2500人が負傷した。そのほとんどは女性であった。劣悪な労働環境で生産されていた衣料はほとんどグローバル・ファストファッションブランドであったとも言われている。
・世界のファッション消費金額 =2015年約140兆円→2030年約300兆円(2倍に!)
※国内は成長が止まった産業ですが世界的に見ると成長産業で、まずます地球環境に負荷をかけることが予測されています。
・日本人と同じ生活レベルを世界中に広げる =地球が約2.4コ必要
※ちなみにアメリカレベルの生活を世界に広げると地球は5.3個必要
※エコロジカル・フットプリント(Ecological Footprint)という指標。あるエリアの経済活動の規模を、土地や海洋の「表面積(ヘクタール)」に換算します。
■日本のファッション・リサイクル率
日本の繊維製品 =年間約250 万トン流通
内、ゴミになる繊維製品 =約150万トン
中古衣料として再使用 =約17万トン
工業用雑巾・ぬいぐるみの詰め物などの再利用
=25万トン
※リユース・リサイクル率は20%以下。
古紙やビン・カン、ペットボトルなどリサイクル率は50%超。
「エアークローゼット」(代表の天沼さんはTFL理事)は、この課題を解決する新しいファッションテックビジネスですね。
■日本の自給率
衣料自給率 =3%(数量)=26%(金額)
エネルギー自給率 =7%
食料自給率 =39%(カロリーベース)
綿・麻・羊毛自給率 =0%
絹自給率 =0.6%
木材自給率 =30%
石油自給率 =0.4%
※世界第3位の衣料消費国である日本の洋服は、ほとんどが海外(中国・東南アジア各国)で生産され船で日本に輸入されます。衣料の輸送にも多くのエネルギーや時間が必要なことも「サスティナブル」視点から解決しなければならない課題を含んでいます。
前述の数字を見てわかるように、ファッション産業は地球環境やエネルギー問題、経済格差など発展途上国の経済活動に大きな影響のある産業です。そして、近隣のアジア各国は経済成長を続けており、この成長にあわせて衣料消費が伸びていくことが予測されています。
つまり、このままでは今まで以上に環境に対する負荷がかかることが懸念されるのです。そして、環境負荷が限界を越えてしまえば、ファッション産業そのものが「サスティナビリティー」を失ってしまいます。
われわれTFLでは、ファッション産業の「サスティナビリティー」には「生産流通方法」「消費の仕方」「質の高い生活に対する考え方」を大きく変えていくことが必要で、そのためには「テクノロジー」を活用する新しいファッション産業に変革できる「ファッションテック人材」が必要と考えています。
新しい美意識、価値観、ファッション消費、ロスを出さない生産流通を世界に発信して行くビジネスを生み出していくことが、世界第3位のファッション大国である日本の果たすべき役割でもあります。
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