ファッションデザインの現場では、これまで「サンプルを作ること」が欠かせない工程でした。実際に布を裁断し、縫製し、形や着心地を確認しながら少しずつ完成形へ近づけていく方法が一般的でした。しかし今、その流れは大きく変わり始めています。
近年、3DCGやクロスシミュレーション技術が進化し、実際に服を作らなくてもデジタル空間でリアルな検証ができるようになってきました。素材の質感や落ち感、光の反射、動いた時の揺れ方まで再現できるようになり、サンプルを何度も作る必要が減りつつあります。
この変化には大きなメリットがあります。サンプル制作には多くの時間とコストがかかりますが、デジタル化によって作業効率を高めることができます。また、試作品の廃棄も減らせるため、環境負荷の軽減にもつながります。持続可能なものづくりが求められる今、この変化は非常に大きな意味を持っています。
しかし一方で、効率化によって失われるものもあるかもしれません。実際に手で触れたときの質感や重さ、着た瞬間の心地よさや違和感などは、現時点では完全にデジタルでは再現できません。身体で感じる感覚には、画面の中だけでは得られない情報があります。
また、実際の制作現場では、偶然生まれる発見も少なくありません。素材のわずかな違いや、思い通りにならなかった変化が、新しいアイデアにつながることがあります。一見すると失敗やノイズに見えるものが、結果的にデザインの個性や魅力になることもあります。
だからこそ重要なのは、デジタルかフィジカルかを選ぶことではありません。デジタルには効率や再現性という強みがあり、フィジカルには身体的な体験や偶然の発見があります。これからのクリエイションに必要なのは、その両方の特性を理解し、目的に応じて組み合わせることなのかもしれません。
服づくりは、単に効率を高めるだけではなく、どのような体験や発見を生み出すかも大切です。これからの時代は、デジタルと身体感覚を行き来しながら、新しいデザインの方法を作っていくことが求められているのではないでしょうか。
あなたは身体的なプロセスでデザインしますか?
それともデジタル的なプロセスでデザインしますか?
執筆:木内 潤一