3DCGや生成AIの進化によって、ファッションデザインの世界は大きく変わり始めています。今では布を一度も裁断することなく、デジタル上だけでリアルな衣服を制作し、そのまま広告やSNS、ゲーム、メタバースなどで活用できるようになりました。
こうした変化の中で生まれるのが、「3DCGでファッションを作る人は、ファッションデザイナーと言えるのか」という問いです。
これまでファッションデザイナーとは、生地を選び、パターンを設計し、縫製を経て衣服を完成させる人というイメージが一般的でした。しかし現在では、3DCGを使って現実では実現できないデザインや質感を表現し、新しいファッション体験を生み出すクリエイターも増えています。
この問いを考えるには、「ファッションとは何か」を改めて見つめ直す必要があります。もしファッションを単なる衣服と考えるなら、現実の服作りは欠かせません。しかし、自己表現や価値観を伝えるためのメディアと捉えるなら、その表現方法は布だけに限られません。3DCGデザイナーもまた、色やシルエット、世界観を通して新しい価値を提案しているのです。
もちろん、デジタルだけで完結するわけではありません。リアルな身体の動きや素材の特性を理解しているからこそ、説得力のあるデジタルファッションを生み出せます。そして、その知識にデジタルならではの自由な表現を組み合わせることで、これまでにないクリエイションが可能になります。
大切なのは、「どちらが本物のデザイナーか」を決めることではありません。それぞれが異なる領域でファッションをデザインしていることを理解することです。これからは、リアルとデジタルを行き来しながら、新しい価値を生み出すクリエイターがますます増えていくでしょう。
デザイナーを定義するのは、使うツールではありません。布を扱うか、3DCGを扱うかではなく、「何を伝えたいのか」「どのような価値を届けたいのか」という目的こそが重要です。
これからの時代に求められるのは、手段に縛られず、目的に応じて最適な表現方法を選び、新しい価値を生み出す柔軟な発想なのではないでしょうか。
あなたにとってデザインするとは、手を動かすことでしょうか?
それとも、自分の考えや価値観を形にすることでしょうか?
執筆:木内 潤一