近年、3DスキャンやAIの進化によって、自宅にいながら服を試着できる「バーチャルフィッティング」が広がっています。スマートフォンで体型を計測するだけで、自分に合ったサイズやシルエットを画面上で確認できるようになり、買い物はますます便利になりました。
さらにAIは、体型や肌の色、過去の購入履歴などを分析し、「あなたに似合いそうな服」を提案してくれます。サイズ選びの失敗や返品を減らせるなど、多くのメリットが期待されています。
しかし、ここで考えたいのは、「似合う」とは本当にAIが決められるものなのかということです。
AIが導き出す「似合う」は、多くのデータをもとにした統計的な判断です。合理的な提案には優れていますが、ファッションの魅力はそれだけではありません。
私たちは、いつも一番似合う服だけを選んでいるわけではないからです。気分を変えたい日には普段と違う色を選び、新しい自分に挑戦したいときには、少し大胆なスタイルを着ることもあります。あえて違和感のある服を選ぶことが、自分らしい表現につながる場合もあります。
つまり、「似合う」という感覚には、見た目だけではなく、その日の気持ちや価値観、「どんな自分でありたいか」という思いが含まれています。こうした要素は、数値だけでは判断できません。
だからこそ、バーチャルフィッティングは「正解」を示すものではなく、「選択を助けるツール」と考えることが大切です。AIはサイズやフィット感を客観的に教えてくれますが、その服を着て心が動くか、自分らしいと感じるかは、自分自身にしか判断できません。
これからの買い物は、人とAIが役割を分け合う時代になるでしょう。AIが合理的な情報を提供し、人はそこに感性や価値観を加えて選択する。その組み合わせによって、より豊かなファッション体験が生まれていくはずです。
テクノロジーが進化するほど、「自分は何を着たいのか」という感覚は、これまで以上に大切になります。
あなたが服を選ぶとき、信じているのは自分の感覚でしょうか?
それとも、AIが導き出した「最適な答え」でしょうか?
執筆:木内 潤一