このシリーズでは、AIやデジタルファッション、バーチャル空間、ブランドの未来など、テクノロジーによって変わるファッションについて考えてきました。その中で一貫して問い続けてきたのは、「創造の主体は誰なのか」ということです。
生成AIや3DCGなどの技術は急速に進化し、専門知識がなくても高品質な作品を生み出せる時代になりました。誰もが創作に挑戦できるようになったことは、とても大きな可能性です。
しかし、その一方で、「その作品は本当に誰が作ったのか」という新しい問いも生まれています。
AIがデザインを提案し、アルゴリズムが市場を分析し、最適な答えを示してくれる時代だからこそ、本当に大切なのは「何を作るか」ではなく、「なぜ作るのか」という目的です。
誰に届けたいのか。
どんな未来を実現したいのか。
どのような価値を社会に残したいのか。
こうした想いや意志は、AIが自動で決めることはできません。
AIをはじめとするデジタル技術は、創造を支える優れた道具です。しかし、道具そのものに目的はありません。目的を与え、意味や価値へと変えるのは、いつの時代も人間です。
ここで考えたいのが、「作る人」と「作らせられている人」の違いです。
「作る人」とは、自ら問いを立て、方向性を決め、最後の判断を自分で引き受ける人です。一方、「作らせられている人」とは、AIやアルゴリズムが示す最適解をそのまま選び、効率的に形にしていく人と言えるかもしれません。
もちろん、どちらが正しいという話ではありません。現代のクリエイターは、一人ですべてを生み出す必要はなく、AIやさまざまな技術と協働することが当たり前になっていくでしょう。
重要なのは、その創造の中心に自分自身の意志があるかどうかです。
AIが提案したから選ぶ。市場が求めているから作る。その判断だけを繰り返していては、効率は上がっても、新しい文化や価値は生まれにくいでしょう。
歴史を振り返れば、新しい時代を切り開いてきたのは、誰も正解だと思っていなかったことに挑戦した人たちでした。AIは過去から最適解を導くことは得意ですが、まだ存在しない未来を信じて一歩を踏み出すことは、人間にしかできません。
ファッションもまた、単なる服や商品ではなく、「どんな世界をつくりたいのか」という意志を形にする営みです。だからこそ、AI時代になっても、創造の中心から人間がいなくなることはありません。
技術が進化するほど、人間の意志はより重要になります。
あなたは、自分の未来を自らの意志でデザインしていますか?
生成された「最適解」の未来を選ばされていないでしょうか?
執筆:木内 潤一