近年、3Dスキャンやモーションキャプチャなどの技術が進化し、自分の身体をデジタルデータとして再現する「デジタルツイン」が身近になりつつあります。デジタルツインは単なる3DCGではなく、体型や寸法だけでなく、姿勢や動きまで再現できる「もう一人の自分」ともいえる存在です。
ファッション業界でも、この技術の活用が始まっています。自分のデジタルツインに服を着せることで、サイズやシルエットを確認したり、バーチャル上で試着したりできるようになりました。店舗へ行かなくても自分に合う服を選べるようになれば、買い物はより便利で快適になるでしょう。
しかし、デジタルツインがもたらす変化は、それだけではありません。
これまで「身体」とは、現実に存在する自分自身を指していました。しかし、デジタル空間にもう一人の自分が存在し、服を着たり、人と交流したりするようになると、「身体」の意味そのものが広がっていきます。これからのファッションは、現実の身体だけでなく、デジタル上の身体もデザインの対象になっていくのかもしれません。
一方で、この技術には新たな課題もあります。身体のデータには、体型だけでなく、健康状態や行動パターンなど、多くの個人情報が含まれる可能性があります。そのデータを誰が管理し、どのように利用するのかは、とても重要な問題です。便利だからといって、自分の身体に関する情報を無意識に預けてしまえば、それは自分自身の一部を他者に委ねることにもつながります。
デジタルツインは、ファッションや暮らしを大きく変える可能性を持つ技術です。しかし、その価値を活かすためには、技術だけでなく、身体やプライバシー、人間らしさについても考え続ける必要があります。
これからの時代、「身体」は現実だけに存在するものではなくなるかもしれません。
あなたは、自分の身体のデータをどこまで自分自身だと考えますか?
そして、データになった「あなた」は、本当にあなた自身なのでしょうか?
執筆:木内 潤一