華やかな広告や洗練されたビジュアルによって彩られるファッションの世界は、私たちに夢や憧れを与えてくれます。しかしその裏側には、原材料の調達から縫製、物流に至るまで、複雑で長いサプライチェーンが存在しています。そしてその多くは、コストを抑えるために賃金の低い国や地域に分散されています。
こうした構造は経済合理性に基づくものですが、その一方で低賃金や長時間労働、不十分な労働環境といった問題が指摘されています。分業化されたサプライチェーンでは責任の所在が曖昧になりやすく、「人権」が製造コストの一部として扱われてしまう可能性も否定できません。安全な環境や適正な賃金を確保すればコストは上昇し、最終的には価格に反映されますが、それを消費者が受け入れられるかという課題もあります。
さらに問題を複雑にしているのは、アパレル産業が生産国にとって重要な雇用を生み出している点です。単純に価格を引き上げたり生産を減らしたりすれば、雇用の減少につながる可能性もあります。この構造は一概に「搾取」と断じられるものではなく、依存関係として捉える必要があります。
近年では、トレーサビリティの向上や第三者認証、サステナビリティレポートの公開など、透明性を高める取り組みが進んでいますが、それが現場の労働環境の改善にどこまで寄与しているかは、まだ十分に検証されていません。
ファッションは単なる消費でも表現でもなく、グローバルな経済と結びついた「選択の連鎖」です。私たちがどのブランドを選び、何を支持するのかが、遠く離れた誰かの労働環境に影響を与えています。
改めて考えてみましょう。
あなたが支持するそのブランドは、どのような労働環境の上に成り立っていますか?
その一着の背後にいる人々の生活に、どのような影響を与えていますか?
執筆:木内 潤一