TFLファッション×テックBLOG 『Fashion Diversities.』 Vol.6-「勿体無い」という視点から見る問題点-
情報技術の発展で新しいファッションビジネスやサービスが生まれています。
新しい技術を活用するためには、現状のビジネス上の課題、問題点を見つけることも必要です。
今回はファッションビジネスにおける「勿体無い」という視点で問題点を考えてみましょう。
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参考情報。。
「勿体無い」は仏教の用語であることを知っていますか?
「勿体(もったい)」はもともと「物体」と書かれており「物のあるべき姿」「威厳」。
そこから「粗末に扱われて惜しい」という意味になったそう。
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シーズンごとに新しい製品が売り出され一見華やかに見えるファッション業界ですが、一方では世界中で年間8000万tもの製品が遺棄されていると言います。
今回は、そんな製造小売業であるファッション業界の「勿体無い」を考えることで新しい「ファッションテック・ビジネス」のヒントを考えてみます。
製造小売業では、製品の生産から小売までを川の流れにたとえて「川上」「川中」「川下」と区別していうことがあります。アパレル産業においての「川上」「川中」「川下」は以下のとおりです。
(繊研新聞社HPから)
川上:繊維や糸の原料や記事を作るメーカー、繊維商社、ボタンなどの副資材メーカーなど
川中:川上で作られた糸や生地を使って商品を製造する分野
川下:川下とは、川上や川中で製造された商品を消費者に対して販売する小売分野。SPAと呼ばれる製造小売アパレル(ファーストリテイリングなど)はこの分野に属します。
消費者の手に渡る製品が、たくさんの段階を経て生産されていることがわかりますね。
この製造小売業の複雑な構造が、多くの「勿体無い」を生み出していることもまた事実なのです。
◆見込み生産の売れ残りが勿体無い=生産工程・需要予測
完全受注生産でない場合、供給側は見込みで物を製造をします。売り逃がしのないように多めに生産したものは、そのシーズンの終わりには残ってしまいます。
ファッション流通では
「糸」→「生地(布帛)」+「副資材(ボタン・糸・芯地・ファスナーなど)」→「製品(衣料)」
の各段階で見込み生産の売れ残りが発生します。
売れ残る原因は、商品を供給する側の需要予測が実売に結びつかなかったこと。
供給側は、少しでも売れる機会を逃したくないのでたくさんの品種の商品を揃えたくなります。
ではここで、需要予測をするにあたって衣料の購買に影響を与える要素を考えてみましょう。
ぱっと思いつくだけでも「アイテム」「色」「形」「サイズ」「スタイリング」「価格」「売る時期」「売る場所」「PR」「流行」「社会状況」「天候」「競合」「購入者の気分」などなど。
アパレル各社は、デザイナーやMDの経験を生かした需要の未来予測とあわせて、上記の要素や過去の販売実績などのビッグデータを分析して、AIなどによる未来の需要予測精度を上げようとしています。
しかし、購買に影響を与える要素が非常に多いことや、購入者の気持ちとして「昨年と違う新しい商品を購買したい」という欲求があるため、実際に何が売れるかを正確に予測することはまだ難しいのが現状です。
裏を返せば、この領域にはまだまだ新しいファッションテックサービスを創業するチャンスがあるということです!!
ちなみに現在、これら供給側の課題を解決する新しいファッションテックビジネスとしては、以下のような取り組みがあります。
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参考情報
ファッションアパレル商品の寿命(販売期間)は8週間といわれ、これ以降はセールなどで安く販売されます。
→リアルショップやECサイトに長い期間同じ商品が並んでいると売れ行きが悪くなるためです。
作る側も、日本国内・韓国・中国・東南アジアなどの生産工場を使い分け4-6週間で納品する仕組みをつくり、初回生産量を少なくして売れ行きを確かめて追加生産する「QR(クイックレスポンス)システム」で売れ残りを防ごうとしています。ZARA(スペイン)では商品企画から店頭納品まで平均3週間(最速1週間)などというQRシステムを構築して高利益をあげています。
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つづいて従来の製造小売の枠を超えたファッションテック・サービスを見てみましょう。
◆使い捨てるが勿体無い=リユース・シェア
◆複雑化した流通の仕組みが勿体無い=オーダーメイド・D2C
原価も工場も見せるオンラインSPA(サンフランシスコ)=EVERLANE
などなど・・・
そして新しい価値観に向けたサービスや、技術革新によって生まれる体験・サービスなども
◆新しい時代に向けて=テクノロジー・価値観の変革
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今回は「勿体無い」という課題をテーマにファッション流通をソリューションするサービスを考えてみました。
石油産業の次に環境負荷が高いと言われるアパレル産業。
世界的に見てもまだまだ成長産業であるだけに、このままではその「勿体ない」が増え続けていく可能性あります。これはアパレル産業、ファッション業界にとって重大な課題です。
一方で、こうした課題を新しい発想や技術革新で解決することができれば、非常に大きなビジネスチャンスとなります。さまざまな視点でファッションビジネスを考えて、新しい時代のファッションビジネスをスタートしませんか?
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※参考情報
AI(人工知能)などを使って、需要予測がされていますが、特にファッション流通では、サイズ、色、アイテムなどの商品バリエーションが多いことや、販売期間が限られることもあり、見込みで作ったものを100%販売することは至難の技です。
作り手側は、その在庫のロスを想定して販売価格に上乗せをします。プロパー価格(値下げをしない正規価格)には在庫処分の費用が上乗せされているのです。
さらに、ファッション産業における商品ニーズの変化は他産業よりずっと早く、多品種(色・サイズ・形・素材など)であるため在庫リスクの管理が最重要事項となっています。
季節によって販売できるアイテムが違うため売れ残ると半年以上販売する機会がなくなり不良在庫となります。そのため、シーズンの終わりにはバーゲンセールをしたり、仕入れ業者に返品したり、商品を燃やしたりすることなどが業界の慣例になっています。
逆に言えば、こうした不良在庫が出ないように生産できるのであれば在庫ロス分が販売価格に上乗せされることもなく、消費者は品質の良い製品を安く購入できるようにななります。
「勿体ない」をなくすことができれば、全員が得をするかもしれませんね。